アウトドアな派遣のお仕事

私が大学生の時に登録していた人材派遣サービスで、忘れられない仕事があります。その仕事は、なんと焼き芋を焼いてお客様にお渡しするという作業で、7時間の実働で8000円のお給料でした。

その仕事は、自動車メーカーが販売促進キャンペーンでイベントをした際、当時私の住んでいた県内各地の全販売店舗で実施されたものです。仕事場に就いてびっくりしたのが、焼き芋を焼く窯です。なんと、ドラム缶でできていたのです。このドラム缶窯、手作りだそうで、レンガの上にドラム缶が立てられ、火をたく部分が切断され、穴があけられていました。現場では焼き芋の焼き方マニュアルに従ってサツマイモを焼いていきました。

マニュアルは絵と文章で大変詳しく焼き芋の焼き方が書いてありました。まず、両手に群でをはめ、新聞紙を細長くまるめ、ドーナツのように輪を作ります。その新聞ドーナツをいくつか作り、ドラム缶下の焚口に薪と一緒に入れます。そしてマッチで火をつけると、薪が面白いようにすぐに燃え出します。その後、サツマイモをアルミホイルにくるんで、上蓋を取ってサツマイモを入れます。中ほどには石が敷いてあり、その上にどんどんサツマイモをのせていき、再び蓋をしめて焼けるのを待ちます。

まさか、国道沿いのアスファルトに囲まれたきれいな新車の並ぶ店舗の駐車場で、焼き芋を焼くなんて思いもよりませんでした。焼き芋事態がはじめての体験だったので、とても楽しく、興奮しながら焼き芋を焼き続けました。おかげで、野外で焼き芋を焼く方法を知ることができ、思わぬスキルアップとなりました。

自動車販売店のスタッフの方々はとても親切で、キャンペーン中でしたが混雑することもなくほどよくお客様が来店されましたので、ゆっくりとしたペースで芋を焼くことができ、お客様にお渡しすることとなりました。私たちが焼かせていただいたサツマイモは、キャンペーン中に来店されたお客様への来場記念プレゼントだったのです。その自動車メーカーの新聞の折り込み広告には、「ご来場者様には焼き芋プレゼント!」と大きく掲載されていました。お客様は珍しそうに芋を焼くところを見られ、みなさま話しかけてくださり、笑顔で焼き芋を持って帰られますので、焼き芋を焼いてお渡しするこちらまで幸せな気持ちになりました。また、二人一組での作業で、私の相方となる派遣の方は初めてお会いした方でしたが、作業がアウトドア系だからか、すぐに打ち解けることができ、のほほんとした雰囲気の中、火力がどうだとか、サツマイモの焼け具合はどうだとか、楽しく作業にあたることができました。

業務の途中、派遣を依頼したイベント会社の担当者が立ち寄られました。自動車販売店では時々お客様向けにキャンペーンやイベントを開催するそうで、毎回異なる来場者プレゼントを考えておられ、今回はドラム缶窯の焼き芋が採用されたのだそうです。担当者の方はとても気さくな方で、また仕事を募集するからぜひ手伝いに来てね、とお声かけをいただきました。この次の回はプレゼントが似顔絵だったので、美術系の大学生がかなり参加したようです。私は似顔絵を書けないので参加できませんでしたが、人脈も増えてとてもよい機会になりました。

労働の割に給料もよく、ためにもなり、大変面白い派遣業務でした。ただし、焼き芋を焼くのに夢中になりすぎて、顔を焚口に近づけすぎてしまい、メガネの表面が熱で変形して、メガネは買い替える羽目になってしまったのは誤算でした。火には顔を近づけすぎてはいけない、という教訓も教わりました。

帰宅時には余った焼き芋は自動車販売店のスタッフさんたちと分け合い、私にも持ち帰らせてくださり、本当にお得な気分でした。